★総合歯科 万代総合歯科診療所の日常臨床 前歯への歯牙移植3年後★
※ 抜歯等の外科手術の写真がありますのでご注意下さい。
今回は、自家歯牙移植術を行い3年経過した症例を報告します。 万策尽きて抜歯となってしまった場合、その後の処置としてインプラント治療・ブリッジ・義歯(入れ歯)があります。 万代総合歯科診療所には、この他の選択肢として『 自家歯牙移植術 』という技術があります。 他の選択肢よりも厳しい条件がありますが、条件をクリアできればとても有力な技術です。 ★ 症例提示 ★ 初診時
患者:33歳女性
主訴:右上の前歯の歯肉が腫れた。
現病歴:右上の1番目の前歯(以下 右上1)は、過去に根管治療と歯根尖切除術を受けた。しかし再度違和感が生じ、数術前より歯肉の腫脹を自覚する。
現症:右上1腫脹部拡大像。
右上1番目の歯、歯肉に腫脹と排膿を認める。
デンタルエックス線写真:歯根尖切除術によって患歯の歯根は短くなっている。本来は切除した歯根先端部(以下 根尖部)は骨に置き換わるはずが、感染再発のため骨密度が上がらず、画像上では黒いままになっている。
根管治療 開始:根管治療を開始したものの、内部の感染が激しく、残念ながら保存不可能と診断しました。
患者に抜歯の必要性とセカンドオピニオンの提案を行ないました。患者はセカンドオピニオンを受けずに抜歯を了解し、次善策の提案を希望しました。
抜歯後は、何らかの方法で新たに人工の歯を入れることが必要になります。本症例では、通常はインプラント治療かブリッジを選択することになります。
この患者さんは、今回の前歯の他に若干の歯並びの問題もありました。
インプラント治療やブリッジを装着してしまうと、後になって『 矯正をしたい! 』となったときに、その処置が大変厄介になってしまいます。
左下の小臼歯に、歯並びの問題があるために歯並びから逸脱し、上の歯とかみ合っていない歯がありました。このように、相手の歯とかみ合っていない歯のことを不働歯(ふどうし)と言います。
不働歯は通常は抜歯の対象になります。矯正担当医に確認したところ、将来矯正治療を行う場合でもこの歯は不要であるとの回答でした。
左下小臼歯と上の前歯は、歯根の形が近似しています。この不働歯を抜歯して、移植のドナーとして右上1に移植する提案を行い、患者もこれに同意しました。
右上1の抜歯を行いました。
抜歯した右上1です。広範囲に感染が及んでいました。
左下小臼歯部の不働歯を丁寧に抜歯します。
抜歯した左下小臼歯を右上1部に移植し、固定します。
移植直後のデンタルエックス線写真です。適正な位置に移植されています。
移植した歯の根管治療を行います。
根管充填直後のデンタルエックス線写真です。
最終冠装着、治療終了時です。右上1 歯肉の腫脹は消えています。患者自身も違和感なく日常生活が送れるようになりました。
抜歯した左下小臼歯部もスッキリしています。歯磨き等の管理もしやすくなり、虫歯や歯周病になりにくい環境になっています。
最終冠装着直後のデンタルエックス線写真です。根尖部が少し吸収されています。吸収が進行してしまうこともあるので、注意深く観察する必要があります。
最終冠装着後3年経過時のデンタルエックス線写真です。根尖部は それ以上吸収されることはありませんでした。
最終的にはインプラント治療もブリッジも行わず、自身の歯で問題解決ができました。
※ 以下も、ご参考になさってください。