『予防歯科』 と 『予防管理』 の表現について
なぜ定期検診に通っても予防がうまくいかないのか
歯科医療側からは多くの場合、『虫歯・歯周病など口腔内の問題の発生を未然に防ぐ行為』 のことを “予防歯科” と情報発信されています。しかし本来の専門的には、“ 予防歯科 ”はもっと広い範囲で解釈されているのです。(詳しくはこちら)
よって、万代総合歯科診療所では 『虫歯・歯周病など口腔内の問題の発生を未然に防ぐ行為』 を“予防歯科”ではなく “予防管理” と別表現しています。
万代総合歯科診療所が 『予防歯科』 と 『予防管理』 を区別して表現しているのは
- 『予防歯科』が『矯正歯科』・『小児歯科』・『審美歯科』等と並ぶ“歯科医療における独立した一部門”と、患者側に誤解させてしまわないようにするため。
- 『予防歯科』が、虫歯治療・根管治療・抜歯などの『歯科治療行為』と対立軸にあるものと患者側に誤解させてしまわないようにするため。
- 『予防管理』のすべてを歯科医院に委ねるのではなく、日頃の歯磨き等の “セルフケア(自己管理)“ が重要であることを認識していただくため。
以上3点を目的としています。
万代総合歯科診療所での予防歯科 5つのポイント
万代総合歯科診療所での予防歯科には、主にこの5つがあります。
- ① 基準点としての、各種基礎資料の採取
- ② 患者個人の状態に合わせた各種指導
- ③ 予防管理と並行した治療介入
- ④ 治療終了後(または、各種検査にて問題なしと判定された後) の管理
- ⑤ P.M.T.C.(Professional Mechanical Tooth Cleaning:歯科衛生士によるプロクリーニング)
① 基準点としての、各種基礎資料の採取
予防管理には、以下にお伝えするいくつかの項目がありますがそれらすべてを行うためには、まず “基準点” に相当する “基礎資料” を採らなければなりません。
万代総合歯科診療所では、口腔内総合検査として
- 規格口腔内写真(カメラ写真)
- 規格デンタルエックス線10枚法(14枚法)写真
- パノラマエックス線写真
- 歯周組織検査
- プラークスコア(磨き残しの確認)
- 唾液検査(虫歯リスク検査)
- 咬合(噛み合わせ)検査
- 歯型模型
- 顔貌、全身写真(体の歪み具合の記録)
などの基礎資料を、各患者の状態に応じて採っていきます。(口腔内総合検査の、内容・費用についてはこちら)
インプラント治療が必要な方には
- 歯科用CT写真撮影
- 内科疾患確認用の血液検査
を随時追加していきます。
治療中、治療後、定期検診時などの際にこれらの基礎資料を口腔内総合検査時のデータに追加して、随時データを更新・蓄積して口腔内の状態が年月とともにどのように変化していくのかを、確認できるようにしていきます。
皆様の中には 『これが予防なの?』 と、疑問に思う方がいるかもしれません。もちろん、口腔内写真やエックス線写真を撮影しただけでは虫歯や歯周病等の口腔内の問題は防げません。
しかし、以下に挙げる②~⑤の項目を実行する際にもこれらの “基準点” に相当する基礎資料がないことには『今の状態は過去の基準点と比較して、どのように変化したのか?』『それがどのように、良くなったのか?悪くなったのか?』という事さえも確認できない『いきあたりばったりの予防管理(歯科臨床)』になってしまうということは“本来のあたりまえの事”なのです。
あなたが受けている “定期検診・予防管理” には、“基準点” はありますか?『いきあたりばったりの予防管理(歯科臨床)』になっていませんか?
① 基準点としての、各種基礎資料の採取
残念ながら、日本の健康保険制度を前提とした歯科医療の現場においては
- 『デンタルエックス線10枚法写真とパノラマエックス線写真は、同時期に撮ってはならない』
- 『口腔内写真は5枚まで』
- 『唾液検査(虫歯リスク検査)は健康保険制度では認められない』
などの歯科医学・歯科医療を無視した強大な “制限ルール“ があります。(詳しくはこちら)
したがって、一般的な歯科医院においては
- パノラマエックス線写真
- 主訴部位(最も気になるところ)のデンタルエックス線写真
- 歯周組織検査
この3点の基礎資料の採取だけになってしまう事が多いのです。しかし、基礎資料がこれだけでは、実は “全く足りない” のです。
健康保険制度における “制限ルール“ によって生じる不足の基礎資料を、自費診療として別料金を請求してそれによって得られたデータをもとに、その後の治療を一部でも保険診療で行えば“混合診療” として医療側が行政処分の対象となってしまいます。
日本の健康保険制度には、歯科医学・歯科医療を無視した “制限ルール“ があることを背景にこのような基礎資料を採取することが、まだまだ一般化されていない現状があります。
② 患者個人の状態に合わせた各種指導
上記①の “基準点” に相当する “基礎資料” を集めていくとこの患者さんは、平均的な方に比べて
- 『虫歯にかかりやすい』
- 『歯周病にかかりやすい』
- 『歯ぎしり・くいしばり をしているようだ』
などの、各患者さん個人の特性がわかるようになってきます。
万代総合歯科診療所では、一般的生活指導、歯磨き指導、フッ素剤使用法指導、糖分摂取管理指導、食生活指導、噛みあわせ指導、等を通り一遍ではなく、これら各患者さん個人の特性を配慮してお伝えしていきます。
③ 予防管理と並行した治療介入
口腔内に問題があって治療介入が必要な場合、単に治療介入のみを行うのではなく、治療と予防管理を並行して治療介入を行います。(応急処置を除く)
歯科医療は、緊急・応急処置の場合を除いて、すべての治療介入を行う際には必ず歯磨き指導等の各患者さんに応じた指導を受け、患者さんがそれを実践・継続していることを前提に治療介入と予防管理が常に “並行・両立” していることが要求されます。
歯科臨床においては、あらゆる治療を行うときにも各患者さん個人の特性を配慮した予防管理が、常に実践されている事が必要なのです。
患者側が医療側に対して、『歯磨き指導はいらないから治療だけやってください。』 と要求するのは極めて限られたもの、または大変レベルの低いものしか受けられない、ということになります。
逆に医療側が、歯磨き指導等の予防管理を行わずして治療行為のみを行う、というスタイルは1980年代後半くらいまでの(昭和時代の)歯科医療では “普通のこと” でしたが、現代においてもこのような旧態依然のままのスタイルであれば極めて限られたもの、または大変レベルの低い歯科臨床しか提供できていない、ということになります。(緊急・応急処置の場合を除く)
④ 治療終了後の管理 (定期検診) (または、各種検査にて問題なしと判定された後の管理)
総合検査の結果で確認された問題点の治療を終了した後、または総合検査の結果、問題なしと判定した場合に口腔内の状況に応じて1~4ヶ月ごとの定期検診にご参加いただき
- 口腔内一般検査(歯・歯肉・軟組織)(視診・問診・触診・打診)
- 歯周組織検査
- 歯磨き指導(染め出し)
- フッ素成分の応用、糖分摂取管理の指導、一般生活指導、食生活指導
この4点を中心に定期検診を行います。定期検診にご参加いただくことで
歯磨きや糖分摂取等の自己管理が継続されているか?
患者本人が気づいていない、新たな問題が発生していないか?
ということが、確認できます。
患者本人が、「痛い」「つめものがとれた」などの問題に気づいてからの対応では、既に重症になっている事が多く、対応が後手にまわることになります。
また、定期検診時に新たな問題の発生またはそれが疑われる場合には、咬合検査・エックス線写真検査・口腔内写真撮影・唾液検査を、その状態に応じて行い、治療介入を行うか、経過観察(様子を見る)のかを検討していきます。
⑤ P.M.T.C.(Professional Mechanical Tooth Cleaning:歯科衛生士によるプロクリーニング)
定期検診において、一連の検査・指導の後、P.M.T.C.( Professional Mechanical Tooth Cleaning : 歯科衛生士によるプロクリーニング)を行います。
理想をいえば、完璧な(100点の)歯磨きをしていただきたいのですが、100点の歯磨きを毎日毎日維持するのは、事実上不可能です。どんなに良くてもせいぜい90~95点くらいです。ですが、5~10点の磨き残しが積もりつもっていくと、新たな虫歯や歯周病などの問題が出てきてしまうので、そこは定期検診の際に主に歯科衛生士がP.M.T.C.(プロクリーニング)を行ってサポートしていきます。
もし、あなたが受けている定期検診の内容が、簡易的な口腔内一般検査とP.M.T.C.だけを受けているだけで、①でお伝えした基礎資料の採取も歯磨き指導もないのであれば、それは本来の『予防管理』とは程遠い『やらないよりはマシ』 程度の、単なる ”デンタルエステ” にすぎません。