第一次予防・第二次予防・第三次予防
これからお伝えすることは、当院の “独自の理論” ではありません。
医師・歯科医師・看護師・歯科衛生士などの医療従事者は、必ず大学等の講義でこの理論を習います。その後、各自が従事する領域(歯科……内科、外科、眼科…)においてこの理論を当てはめています。
『予防』は、第一次予防・第二次予防・第三次予防と、大きく3つに分けられます。
- 第一次予防:疾病の発生を未然に防ぐ行為
- 第二次予防:重症化すると治療が困難または大きなコストのかかる疾患を早期に発見・処置する行為
- 第三次予防:重症化した疾患から社会復帰するための行為
便宜上、一次 二次 三次と分けていますが、実際は明確な線引きをするものではありません。同じ行為であっても、その目的や施術者の考えによって解釈が変わります。
第一次予防
第一次予防は、簡単に理解できます。いわゆる“予防”です。
第一次予防:疾病の発生を未然に防ぐ行為
第一次予防は、『健康増進』と『特異的予防』に分かれます。
『健康増進』:虫歯や歯周病など特定の病気・疾患に対する予防ではなく、一般的な予防対応策をさします。例えば生活環境改善、適切な食生活、運動・活動の励行、適正飲酒、禁煙、ストレス解消、…などです。皆様には、普段から実践していただきたいことです。
『特異的予防』:歯科臨床においては
- 歯磨き指導:(虫歯・歯周病予防)
- 糖分摂取指導:(虫歯・歯周病予防)
- フッ素の応用:(虫歯予防)
- P.M.T.C.(プロクリーニング):(虫歯・歯周病予防)
- スポーツマウスガード:(歯の破折・脱落予防)
などが、これに当てはまります。(※ 万代総合歯科診療所では、1~4を予防管理と表現しています。)
これ以降は、いわゆる“治療”になってしまうので、違和感が生じてくるでしょう。
第二次予防
第二次予防は、『重症になってしまうことを “予防” する』 と解釈すればいいでしょう。
第二次予防:重症化すると治療が困難または大きなコストのかかる疾患を、早期に発見・処置する行為
第二次予防は、『早期発見』と『早期治療』に分かれます。
『早期発見』:治療介入を行うかどうかは別にして自覚症状の有無にかかわらず、病気・疾患を早期に発見しておくことは賢明なことです。歯科臨床においては、
- 口腔内写真撮影
- 顔貌、全身写真撮影
- エックス線写真撮影
- 歯周組織検査
- 歯型模型審査
- 咬合検査
などが、これにあてはまります。治療後の定期検診もこれにあてはまります。
『早期治療』:(治療介入を伴わない経過観察 〔様子を見る〕 を含む)
歯科臨床においては
- 軽度~中程度の虫歯治療(または経過観察)
- 歯周初期治療(軽度の歯周病治療)
- 糖分摂取指導:(虫歯・歯周病予防)
- 矯正治療
- 咬合治療
などの臨床的治療が、これにあてはまります。
第三次予防
第三次予防は、『手遅れになってしまうことを“予防”する』 と解釈すればいいでしょう。
第三次予防:重症化した疾患から社会復帰するための行為
咀嚼機能低下防止、リハビリテーションがこれに含まれます。
歯科臨床においては
- 根管治療(重度の虫歯治療)
- 歯周外科治療(重度の歯周病治療)
- クラウン修復
- ブリッジ
- 義歯
- インプラント治療
- 全顎的咬合回復治療(Oral Rehabilitation)
- 口腔外科治療(抜歯・腫瘍切除術・外科再建術等)
どこかで得てきた『歯をいじらない、さわらない、削らない、抜かない』ことさえ実行すれば、すべてが解決するかのような情報だけを鵜呑みにしてしまい、虫歯治療や歯周病治療などの二次 三次予防が本当に必要になっているにもかかわらず、しかるべき治療介入を拒否する方が出ています。 このような方は、長期的・総合的利益の観点では、大きな機会損失を招いてしまいます。